かつて5つの民族が住み、4つの言語と3つの宗教を持ち、
2つの文字を用いた1つの国があった…

その国の名はユーゴスラビア。
1995年その国が引き裂かれ、血を流す渦中に作られ、
カンヌのパルム・ドールに輝いた、
半世紀にも渡る大河傑作劇がデジタルリマスターされて、
再度、銀幕に掛かった。

…ホントはね、去年の暮れに名古屋でもやってたんだけど、
体調悪くて観損ねて、ラストチャンスでやってた渋谷まで遠征したんだよ。

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舞台は1941年のベオグラードでのドンチャン騒ぎで幕を開ける。
ナチス・ドイツによる空爆が始まる中、
男は友や弟を含む一同を地下都市に匿い、
対ナチスのパルチザン活動のための武器製造を行わせる。

やがてナチスによる侵略は終わりを迎えるのだが、
男は地下の仲間達にそれを知らせない。
未だ闘争は継続中であると、毎日丁寧にサイレンとアナウンスで煽り、
武器を作らせ続け、地上に上げられた武器を転売することで、巨万の富を得る。

だが、やがてその偽りの地下都市にも孔が開く時がやって来る。
地下都市にて産まれた友の息子が結婚式を上げる当日、
ドンチャン騒ぎの中、製造された戦車の大砲が火を吹き、
友とその息子は『今こそ反撃の時』とばかりに勇躍外の世界へと駈け出していく。
弟は行方不明になった相方の猿を捜して地下通路を彷徨い歩く。
そして男は偽りの飾りが剥がれたことを悟り、地下都市そのものを爆破する。

1980年、この複雑なモザイク国家を一つに纏め上げていたカリスマ、
チトーが死去する。これを機に地上の国家でも民族の対立を装った
利害の対立が噴出し始める。

やがて地上の精神病院に入院させられていた弟は真実を知り、
舞い戻ったユーゴスラビアで尚も武器商として暗躍する兄と再開する。

後の景色は悲惨である。
昨日までの隣同士が『民族が違う』という理由だけで殺し合い、
弟は兄を死に物狂いで殴打し、友は男と知ること無く殺害を命じる。

友はかつての偽りの地下都市の残骸へと戻り、
息子の声に導かれるように井戸に身を投げる。
その先の楽園では皆が楽しげに再会し、楽団はドンチャン騒ぎを始める。

そして、その一団が乗った大地は陸から切り離され、何処ともなく彷徨ってゆく。

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例え、それが偽りだったとしても、故郷が破壊され四分五裂に切り裂かれていく。
それでいて尚、歌と笑いは決して忘れない。
その哀しみと意地に想いを馳せる時、胸が詰まるものがある。


ハッキリ言ってこの映画が最初に公開された時に、
講談社の用意したタダ券で見に行って、したり顔で
『セルビア人の肩を持ってるのが気にかかる』とか吐かして
原稿料貰ってた弘兼憲史は創作者としてどうこう以前に、
人間としての感性が欠如しているアホである。

現在の旧ユーゴスラビアは6つの国に分かれ、
自治州も区別すると8つにまで別れてしまった。
これで収まるのかも知れないが、実際にはサッカーの元代表選手が
未だ自分の故郷に足を踏み入れることさえできず、
ユーゴサッカー90年代を代表するファンタジスタ、
ストイコビッチの自宅に手榴弾が投げ込まれているのが現実である。

この物語は果てしなく続いていく、
願わくばそこに歌と笑みと喜びが絶えないことを…

公式HP

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